郡上踊り(岐阜)
郡上踊りは岐阜県郡上市八幡町で行われる盆踊りである。郡上八幡の盆は、間違いなく日本一長い。踊りの日程は7月の半ばから9月の上旬までであり、約2ヶ月の間、ほぼ毎日踊られる。中には「徹夜踊り」と言って、夜通し踊り続ける日もあり、日程表を見ただけで郡上八幡の人がいかに踊り好きかが分かる。
私が郡上八幡を訪れたのは2003年と2006年の2回。1回目は9月の踊り収めに行き、2回目は8月の徹夜踊りに行った。
郡上八幡は非常に美しい町である。私がこれまで訪れた町の中で、一番美しいと断言できる。いたるところに湧き水が出ており、自由に水が飲めるようになっている。古い民家は、美しく年をとった老婆のようであった。道脇には水路があり、そこで洗濯をしたり野菜を洗ったりもしているようである。
吉田川を少し下れば、川を見ながら人々がのんびりしている。この町を見れば、きれいな水が豊かにあるということは、この上ない贅沢であろうと思う。
かの有名な吉田川ジャンプコンテストに使われる橋にも行った。この橋は高さが約12mあるのだが、この橋の上から川に飛び込むという、子供達の伝統的な遊びがある。上から覗くとかなり高く、怖かった。しかもその横には
「この橋は高さが12mあり、水死事故も起きているので、、飛び込みの際には十分注意してください」
という看板が立っていた。禁止しないところがすごいと思った。
2回目に行った時、飛び込みを見ることが出来た。町の若者が12mもある橋の上から飛び込むのである。凄い迫力である。橋の上では若い男女が騒いでいる。男はまるで自分を誇示するように次々と飛び込んでいく。たまに女の子も飛び込んでいた。この町では、この飛び込みが出来ないと一人前とされないらしい。
さて、主題のの郡上踊りだが、初めて見たときの衝撃は凄かった。何が凄いかというと、みんな踊っているところである。郡上踊りを見れば、盆踊りの常識が覆る。屋台を囲んで人の群れが渦巻状に回転しているのである。「踊るのが当たり前」という雰囲気がとてもよかった。。
「踊らにゃソンソン」では無い。「踊るのが普通」なのである。郡上踊りは踊らないと何も面白くないのである。観光客も外人もみんな踊る。踊っていない人種は以下くらいである。
・写真又はビデオ撮影
・疲れて休んでいる。
・祭の関係者
郡上踊りは、見ていてもただ人の群れがひしめきあって手足を動かしているだけであり、見栄えのするものではない。自分が踊らないと面白くないのである。踊りは10分も踊っていれば踊れるほどシンプルである。振り付けには、下駄で地面を蹴って「カツン」という音をさせる動きがあり、下駄を買えばなお楽しい。
踊りの上手い人を見ながら私たちも踊ってみた。郡上の老人や老婆は味のある踊りをする。彼らを見ながら踊って分かったのは、みんな振り付けが違うことである。みんな上手いのだが、踊りはそれぞれ全然違う。それぞれの個性を極めたように見える。
今、郡上踊りをやれと言われても出来ない。しかし、祭に行けば、間違いなくすぐに思い出して踊ることが出来る。下手でも何でも、祭に行って手足を何となく動かせば、それが郡上踊りになるのである。

左:ゲタ売り場 中:郡上の風景(新橋より) 右:郡上踊りの様子
祭り見聞録へ 次へ TOPへ