秩父屋台囃子(埼玉県秩父市)



 秩父屋台囃子は、毎年12月2日、3日に行われる「秩父夜祭」で演奏されるお囃子である。基本的な楽器構成は、大太鼓1・締め太鼓3・鉦1・笛1であり、山車の中で演奏されるため、外から演奏者の姿は全く見えない。見えないからこそ、山車の中から響いてくる迫力のある音は、物凄い迫力である。

 山車がまっすぐ進むときは大太鼓が打ち鳴らされ、山車が曲がる時は「玉入れ」と呼ばれる締め太鼓による複雑なリズムのソロ打ちが行われる。

 地打ちは締め太鼓による「テケテケ・・・・」のリズムだが、単純な八分音符の連続ではなく、絶妙に

「テケテッケ・・・・」

となるのが特徴である。そして、この「テケテッケ」のリズムは町によって演奏者によって微妙に異なり、それがお囃子に味わいを持たせている。残念ながら、殆どの太鼓団体ではこの絶妙なリズムを再現するのは不可能であり、八分音符の連続で代用している。

 大太鼓や玉入れのリズムは、大枠は決まっているものの、きちんとした演奏順はなく、自由に演奏する。笛は、太鼓に合わせて適当にピロピロ吹くが、これがまた味わい深い。決まったメロディがないため、抽象音楽のような調和と伝統曲の土臭さが感じられる。慣れ親しんだ仲間と叩けば、いつまで演奏していても飽きない。

 秩父屋台囃子は、鼓童や鬼太鼓座が秩父屋台囃子でも演奏されているが、地元の演奏とはずいぶん異なるものである。秩父屋台囃子は、狭い山車の中で演奏する関係から、太鼓を斜めに置いてそれを足で挟み込むようにして叩く。鼓童や鬼太鼓座などのプロ団体は、その姿勢からヒントを得て、腹筋を使ってのけぞる様に叩く方法を考案し秩父屋台囃子を世に広めた。これはこれでかっこいいが、地元の秩父屋台囃子とは大きく異なる。

 困ったことに、これらの秩父屋台囃子を見て更にアレンジを重ねた団体は、更にたちが悪い。鼓童や鬼太鼓座まではオマージュと言えるが、更なる真似の真似になると、地元の雰囲気は全く失われ、太鼓の演奏ではなく筋肉トレーニングのような印象を受ける。こうなると、演奏は重々しくなり、辛そうにしか見えない。

 演奏する時には、祭の雰囲気を大事にしたいと思う。テンポにも打ち方にも塩梅があり、雰囲気が出るポイントは非常に狭い。これをいかに見つけられるかが、屋台囃子の難しさであり面白さだと思う。

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