今週はインドネシアでは3連休があり、ジョグジャカルタへ一泊二日の一人旅に出かけた。一番の目的は、下に何度か書いたとおり、この国での経験値を上げること、二番目はジャカルタの汚く騒々しい雰囲気から逃れてのんびりすることである。事前準備は航空券と手配とホテル予約のみ。あとは行ってから考えるつもりであった。そして、結果的にはさまざまな経験をすることになった。
まずは、空港でチェックイン出来なかった。チェックインの際、クレジットカードの番号が必要らしいのだが、持ってきていなかったのである。クレジットカードは私の部屋の中でカギをかけた引き出しにしまわれている。とりあえず寮で同室のカネさんに連絡して、手持ちのカギで開くかどうか試してもらったが、開かないとのことであった。とりあえず、現金で払うから乗せてくれと交渉していると、再度カネさんから「引き出しを破壊した」との連絡が入り、クレジット番号を教えてもらった。
結局、現金で払って飛行機に乗れたのだが、携帯の電源を切る瞬間にあっと思ったのは、PINコードを覚えていないということであった。会社で支給された携帯は、電源を入れた後、指定の暗証番号を入れる必要があり、3回間違えると使えなくなってしまう。確か7で始まる番号だったなと思いつつ、適当な番号を入れてみたが、2回とも失敗。カネさんなら私のPINコードを調べられるだろうと思ったが、カネさんの携帯番号すら分からない。それどころか、腕時計をする習慣の無い私にとって、携帯が無いと今が何時かも分からないのである。取り急ぎ、時刻が知りたいときはデジカメで写真を撮り、撮った写真に表示された日時を見て確認するという方法でプランバナンを観光した。
夕方ホテルに行き、フロントにてカネさんの電話番号を記憶を頼りに何度もトライするがことごとく失敗。インターネットカフェで自分のメールを確認してようやくカネさんと連絡が取れ、PINコードを入手した。
旅行自体は、学生の貧乏旅行の様であった。交通手段は、トランスジョグジャと呼ばれる一回30円のバス、オジェッと呼ばれるバイクタクシー、ベチャという三輪自転車などである。緊張の連続であったが、ジョグジャの人は基本的に親切で人懐っこく、行きたい場所を言えばどうすればよいか教えてくれる。バスの中で話しかければ、他愛もない話で楽しい時間を過ごせる。結局、右も左も分からず気付いたら目的地に着いており、気付いたら戻ってきている感じであった。
一日目は、プランバナンへ。プランバナンは、9世紀ごろに建立されたと考えられている寺院郡で、ヒンドゥー教と仏教が融合した特徴があるらしい。そのあたりはよく分からなかったが、中央にあるロロ・ジョングラン寺院は素晴らしかった。ここでは、ガイドブックを売っているオッチャンと仲良くなり、地震や噴火の際の身の上話を聞き、日本のツナミは大丈夫かと聞かれた。
ホテルに行った後は、ベチャでレストランまで行った。レストランには他に客はおらず、暇しているウェイターと仲良くなり、おしゃべりした。ここでは、地酒のアラックを飲んだ。結構美味しい。インドネシアはイスラム国であり、地酒は無いものと思っていただけに嬉しかった。ここではレストランのその後は、ベチャのオッチャンに勧められるがままに夜のジョグジャをのんびり回り、ホテルに帰った。
二日目は、世界遺産、ボロブドゥールへ。ここへはバスで一時間半くらい、距離は約30km程度と結構遠いのだが、バス料金は行きはわずか100円、帰りは何故か50円であった。ホテルからバス停までの10分程度の三輪自転車が200円であり、このあたりの料金設定はよく分からない。
ボロブドゥールは、素晴らしかった。これは8〜9世紀頃に建造されたと考えられている仏教施設で、約千年もの間、火山灰に覆われていたというミステリアスな遺跡である。回廊では、精巧な彫刻がなされている。その彫刻は、実に人が多い。何をしているかはよく分からないが、「何か」をしている人が沢山描かれている。人は、そうやって何百万年も生きてきたのであろう。そして、最上階に上れば、人は一人もいなくなり、一気にシンプルなシンボルに集約される。地球の歩き方によれば、これは仏教の「三界」を表しており、沢山の人が描かれている回廊が
煩悩で生きる「欲界」および悟りを求める「色界」、そして、最上階が物質世界から解脱した「無色界」を示しているらしい。特に、無色界への飛躍が実に心動かされるものがあった。
ボロブドゥールを見た後は、また色々な人に尋ねつつバイクタクシー、バス、トランスジョグジャと乗り継ぎ、無事空港まで来た。非常に疲れたが、久しぶりの一人旅はまずまず楽しめた。
左:ボロブドゥール 中:ベチャとオッチャン 右:プランバナンの怪しいマスコット