2018年
9月のつぶやき
9月29日 無題
図書館で、白土三平の漫画「カムイ伝」を借りて読んでいる。外伝も含めて全38巻の大作であるが、Wikipediaによればまだ完結していないらしい。自然の中での動物たちのようすを背景に、江戸時代の人々のありようを描き出す手法は、独特である。緻密に計算されて創られたというよりは、著者の沸きあがる思いがそのまま漫画になったような、異様な迫力がある。絵は、下書きもせずにそのまま描いたと思えるほどの大胆さだが、素晴らしく上手い。
基本的には、江戸の封建社会において、厳しい身分制度に苦しめられる農民や非人の姿が描かれる。おそらく、プロレタリア画家で左翼運動家でもあった父の影響を受けていると思われる。実情は、ここまで酷い話はまれで、当時の農民たちはもっと豊かな暮らしをしていたであろうとは思う。
いきなり話は変わるが、10月から私の働き方は大きく変わり、経験したことのない業務に就く。毎日不安が頭をよぎり、眠れないときもある。本帰国して以来、メニエール病治療で飲んでいた抗不安薬はほとんど飲んでいなかったが、ここのところ使用量も多い。
冷静に考えれば、経験したことも無い業務をいきなり滞りなく出来る訳も無く、これから覚えていけば良いだけの話である。何が起こるか分からない不安、というのも、不安に思うだけばかばかしい話で、起こってから考えればよい。過ちや判断ミスをしたとしても、カムイ伝のように、武士ならば切腹、お家断絶、農民ならば磔、などということはなく、家族の暮らしは保たれるであろう。
そのように、頭では分かっていても、もやもやと余計なことを考えては余計な心配をしているのが、今の私である。カムイ伝の日置領代官、錦丹波が娘に以下の様に語る。錦丹波は、第一部では農民を弾圧する悪代官であったが、第二部では息子の非行や娘のじゃじゃ馬ぶりを心配するパパになっている。
「確かに、人には運命(さだめ)というものがある。だがそれは、誰にも見えぬもの。見えぬ影におびえるは愚・・・人生に運、不運はつきものじゃ。だがそれは、考えるものではない。」
「人の価値は、事にあたっていかに立ち向かえるかじゃ。そのために、日々の修行、鍛錬がある」
もしかしたら、普段の私であれば読み飛ばしていた場所であったかもしれない。今の私には、妙に心に残るくだりであった。
9月22日 サチコ運動会
今日は、サチコの運動会であった。日本で始めての運動会である。私は、「おやじの会」というのに入っており、朝6時からテント設営を手伝っていた。見れば、場所取りの行列が門の前で並んでいる。6時半から開門らしく、良い場所を確保するためにスタンバイしているのである。
開門すると、皆が一斉に走って向かったのが、体育館の中と、グラウンドの隅っこ暗くてじめじめしてそうな場所であった。「日が当たらなくて涼しい場所」が人気らしい。眺望の良い場所を陣取るわけではないらしい。私は、せっかくなので見やすい場所を選んだが、確かに暑かった。他にも、中庭の駐輪場や校舎の裏など、グラウンドから遠く離れた場所で陣取っている人もいた。運動会を観覧する気すらないらしい。
その後は、駐輪場への案内などを手伝った。その他、日傘、テント、脚立の使用は禁止なので、そういった人を注意するという役もあったが、暑い中赤ちゃんや老人が隅っこで日傘をさしているのは、さすがに注意しなかった。
運動会では、サチコはダンス、みこしリレー、徒競走に出場していた。ダンスは好きらしく、家でも優一に教えながら踊っている。あまり近くでは見られなかったが、サチコが踊っているのは確認できた。みこしリレーは4人でみこしを持って往復するというものだが、みこしにひきずられるようになんとか走った。徒競走はビリであった。去年も書いたが、私の娘が運動会で活躍できるわけがない。
昼食は、妻が作った弁当を食べた。暑かったが、非日常で楽しい。これを楽しみに運動会に来ているようなものだと思った。来年は涼しい場所を確保しようと思った。
終わった後は、テントの片づけを手伝い、家に戻った。サチコは疲れているかと思いきや、元気であった。やたらテンションが高い。サチコも楽しんでいたらしい。
9月17日 日田旅行
3連休の最終日は電車で日田に行ってきた。日田は、江戸中期以降、明治に至るまで幕府の直轄領として発展した町で、京や江戸を手本とした町人文化が栄えたらしい。今では、豆田町の古い町並み、鵜飼、日田杉を使った工芸品などがある。
個人的には、日田に行きたいというよりも、久留米と大分を結ぶローカル列車、久大本線に乗ってみたかった。私は、列車に詳しいわけではないが、列車に乗るのは好きである。家族でボックス席に座って風景を眺めれば、至福の時であった。久留米から出発してしばらくすると、田んぼの風景が広がり、やがて山奥の川沿いを走る。
日田に着けば、駅前の雰囲気は何も無い普通の田舎町であった。とりあえず観光案内所に行って調べ、古い町並みの残る豆田町に向かった。ここまで来るとさすがに観光地らしくなり、煎餅や甘酒を買ってぶらぶらした。その後、名物のB級グルメ「日田やきそば」を食べてから川沿いを散歩し、そのへんの公園で子供と遊び、土産を買って帰った。
正直言って、そんなに素晴らしい観光地という感じではないが、私たち家族は素朴に遊ぶのが好きなので、のんびり楽しめた日帰り旅であった。
9月11日 優一トイレトレーニング
優一のトイレトレーニングに苦戦している。最初は、おまるに座ることさえも全力で拒否していた。そして、親のいないところに行って、コッソリおもらしをするのである。どうやら、オシッコを漏らすことに後ろめたい気持ちはあるらしいが、トイレに行くのは嫌らしい。今でも、トイレに行けと言われるのが面倒らしく、オムツにウンコをしてもダンマリを通している。
最近は、おまるや便座には座るようになったが、オシッコは出さない。先週の日曜日、オシッコをしたそうな優一を捕まえて便座に座らせ、スマホでトイレトレーニングの動画などを見せながら粘ったが、駄目であった。ポタポタとオシッコが垂れるあたり、意地でもトイレでオシッコはしない、という気迫が感じられる。諦めてオムツを履かせてしばらくすると、ようやく安心してオシッコをするのである。
それにしても、凄い意思の強さである。最近のオムツは優れているから、オムツでオシッコをするのはもの凄く気持ちよいのかも知れない。私も、オムツでオシッコをする喜びを覚えたら、もうトイレで用は足せないと思うほどなのかも知れないと思った。
すでに日本語を理解し、意思の疎通も出来るのだが、トイレの話になるととたんに分からないふりをする。そこも含めて可愛いのだが。まあ、そのうち出来るようになるであろう。
9月6日 通勤
前にも書いたが、今の私の通勤方法は、
1. 家から自転車を20分こいでJRの最寄り駅へ
2. 電車で3駅(12分)
3. 駅から20分歩いて会社に向かう
というもので、なかなか健康的である。当然帰りはこの逆を辿るわけであるが、私が最も大事にしているのは、朝、駅から会社へ向かう徒歩の20分間である。
この間、出来るだけ深呼吸をしながら、何も考えずに歩くように心がけている。私は、放っておくと色々なことが頭に浮かんできて、無駄に疲弊してしまう傾向がある。そのおかげでこの「つぶやき」も長年続けてこられたわけであるが、あまりやりすぎるとストレスとなるため、この20分間は何も考えないよう心がける。
それでも、色々なことが浮かんでくるが、そのたびに意識を風の感触や自然の音などに向けて、気をそらしている。
一方、帰りは、早歩き、電車の時間が迫っている場合は走って駅まで向かい、自転車もかなりスピードを上げる。早く帰りたいからである。このおかげで有酸素運動にもなっていると思う。そのおかげか、帰国して以来、体調は良好である。
毎日このように通勤していると、季節の移り変わりを感じる。インドネシアから帰国して半年、久しぶりに味わう季節の移り変わりである。
9月1日 日曜日
夏休み後初めての日曜日は、子供たちと自転車で外出した。以前、ブックオフで鳥の図鑑を見つけたサチコが、おこづかいで買いたいと言うので、連れて行った。定価2千円の鳥の図鑑が100円で売られていた。
その後、高さ62mの巨大観音様がいる成田山新勝寺分院へ。ここへは以前も行ったことがあるが、中に入れるとは知らなかった。今回は大人500円、小学生100円の拝観料を払って、中に入った。
観音様の内部は螺旋階段になっており、いちばん上まで行ける。かなり無機質なコンクリートの空間である。各所に30cm四方くらいの小さな窓があり、そこから外を覗けるが、窓が小さすぎて、パノラマを楽しむという感じではない。一番上まで行ったが、またすぐに降りてきた。優一がちゃんと60mの階段を昇り降りできたので、褒めてあげた。
下からは、地下につながる階段があり、そこから廊下を歩いていくと、「地獄極楽館」という表記があった。うち「地獄館」というのに入った。
入り口には閻魔大王が居り、前の石に手を当てると、怖い声で地獄がどれほど怖ろしいところか見せてやる、というようなことを言った。中に入ると、かなり精巧な動くオブジェで、八大地獄のようすが描かれている。大人でもちょっと引くくらいリアルなので、子供たちは固まってしまった。
その近くには、天照大神など八百万の神々、空海等仏教の開祖、はては西郷隆盛など明治の偉人、その他鉱石や仏像や中国の皿などが無造作に展示されたフロアを経て、出口から出た。出口の近くには池の近くで穏やかな人と動物がくらすオブジェがあった。何の表示も無いが、おそらくこれが「地獄極楽館」のうち、「極楽」のほうであろう。
外で座って、ジュースを飲みながらサチコと図鑑を見ていると、両親に連れられた小さい子供が、泣きながら行きたくない、と言っている。おそらく、地獄館に行くのだろう。
帰りに、リサイクルショップに寄ると、かきごおり器が500円で売られている。早速買って、スーパーでシロップを買い(季節はずれなので半額であった)、家でかきごおりを作った。
かきごおり好きのサチコは盛り上がり、美味しく食べてくれた。
今日は少し暑かったが、猛暑という感じではなく、外出しやすくなった。一方で、夏が終わる、と思うと少し寂しくもある。
topへ