今週末は、高千穂へ家族旅行に行った。高千穂は、宮崎県の北西部、九州のほぼ中央にある、山間の町である。独特の地形が特徴の高千穂峡のほか、天照大神が隠れたと伝えられる、天岩戸があり、神話の町として知られる。旅行を決めた後、「ブラタモリ」で高千穂を特集しており、何度か観て予習をした。
高千穂に着いて、まずはあまてらす鉄道に乗りに行った。あまてらす鉄道は、2005年の台風被害により、前線運休となった高千穂鉄道の線路を利用する形で、観光列車として運行している。「鉄道」としてではなく、「遊具」として営業しているらしい。
道に大きな看板などは出ていないので、迷いながらたどり着いた時には、発車2分前であり、ギリギリで切符を買って滑り込んだ。切符は懐かしの硬券である。ディーゼル動力車が引くトロッコに乗って、イルミネーションされたトンネルを通り、高さ105mメートルの高千穂鉄橋の真ん中で停車し、壮大なパノラマを楽しめた。運転手のオジサンがシャボン玉を飛ばしながら、面白い話をしてくれる。

あまてらす鉄道の「グランドスーパーカート」

高千穂鉄橋からの眺めとしゃぼん玉
その後は、ホテル四季見にチェックインした。ここ最近は、テントかコテージにばかり泊まっていたので、上げ膳据え膳のホテル旅は久しぶりである。離れの和室でのんびりと過ごし、豪華な夕食を食べた。食事は、美味しかった。郷土料理が多く、丁寧に作られている感じがする。子供たちも、いつになくたくさん食べていた。

ホテルで囲碁に興じる優雅な親子

夕食の煮物とイワナの包み焼。取り箸は乾燥させた葦(ヨシ)で、
持ち帰ってお守りにするとのこと
二日目は、雨であった。チェックアウト時間の10時ギリギリまでホテルでごろごろして、まずは
天岩戸神社へ。古事記で、天照大神(アマテラスオオミカミ)が隠れ、世界が真っ暗になってしまったという、天岩戸を御神体とする神社である。天岩戸は、神主による案内という形で、参拝することができた。写真撮影は禁止である。天岩戸は、かなり高いところにあり、しめ縄で封印されている。天照大神が二度と隠れないよう、結界を張ったということらしい。神様がしめ縄を通れないというのも、不思議な感じがした。
続いて、600メートル位先にある、神々の会議室(ブラタモリによる)といわれる「天安河原」(あまのやすかわら)へ行った。サチコがお腹が痛いということで、私と優一だけで向かった。険しい渓谷に、ぽっかり空いた巨大な空間は、想像を絶する規模であった。

天野安河原
最後は、高千穂峡に行った。かつてここの美しい風景を写真で見て、高千穂に行ってみたいと思うきっかけになった場所である。実際に行けば、その風景は素晴らしかった。「ブラタモリ」によれば、高千穂峡は、阿蘇の噴火の溶岩が冷えて固まった「柱状節理」と呼ばれる巨大な柱の上に「エンタブラチュア」と呼ばれる、別の構造の溶岩が乗った形をしているらしい。この奇妙な地形は、神様が作ったと言われたら、そうかもしれないと思わせる力がある。あるいは「進撃の巨人」の「硬質化の力」により作られたような感じである。

柱状節理とエンタブラチュア。驚異的な地形

柱状節理を上から見たところ
なんとなく規則的で美しい
高千穂峡を見て、帰路についた。子供たちにとっては、神社巡りなどは退屈であったようだが、引退したら夫婦でもう一度来てもいいかと思えるような、渋い町であった。神話の町ということでもっと古事記に精通していたら、更に楽しい旅であったかもしれない。ちなみに、映画「すずめの戸締まり」の主人公、岩戸鈴芽の名前は、天岩戸に隠れた天照大神の前で舞を踊り、岩戸を開かせた天鈿女(アメノウズメ)に由来するという。すずめの旅の出発点は、宮崎県であった。今読んでいる、荻原規子の勾玉三部作(空色勾玉、白鳥異伝、薄紅天女)も、古事記をベースに作られた小説である。古事記は、ふとしたところで見え隠れする。こうの史代の「ぼおるぺん古事記」を読み返して、日本の神話の世界を楽しんでみようと思った。

あまてらす鉄道にて
2月12日 囲碁