2023年
8月のつぶやき
8月28日 冷たい校舎の時は止まる
最近、辻村深月の小説が面白い。「かがみの孤城」で初めて読んで以来、色々読んでみたくなった。「冷たい校舎の時は止まる」は著者のデビュー作で、メフィスト賞を受賞した。雪の降る日に登校した8人の高校生が、学校内に閉じ込められてしまう。時計は5時53分で止まったままである。そんな中、2か月前に同級生が自殺したことを思い出す。その同級生の顔や名前がどうしても思い出せない中、奇妙な現象が起きて、ひとりずつ血を流すマネキンに変えられて消されてしまう。ホラーであり、異世界モノでありながら、登場人物の生い立ちが生々しく描写され、不思議な世界に惹きこまれてしまう。
辻村深月の書く「学校モノ」が好きである。私と年が同じであることも影響しているのかもしれない。かつて中学生、高校生であったころの割り切れなかった感覚、部活や勉強に励みながらも鬱々とした感覚が思い出される。
次は、最新作、「この夏の星を見る」を買ったので、今日から読み始める。この著者がコロナ禍をどう描くのであろうか。
8月26日 プールに行く
優一と、自転車で市民プールに行った。流れるプールと、ウォータースライダーがあり、なかなか楽しめるところである。ここのプールに行くのは5年ぶりである。サチコも誘ったが、乗り気ではないようで、優一とふたりである。コロナ禍の間に、浮き輪等のプール用品は劣化し、廃棄してしまったので、行きがけに100円ショップでビーチボールを買った。
流れるプールに入れば、優一はすぐにはしゃぎ始めた。ビーチボールを追いかけたり、投げたりしながら終始楽しそうである。水泳をやっているだけあって、あまり水を怖がらず、クロールで少し泳ぐこともできる。背中におんぶして泳いでやると、優一は私の背中に足を乗せてはしゃぎだすので、私はプールの底に沈んでしまう。それが楽しいらしく、私を踏みつけにしてはしゃいでいる。このあたり、サチコの時とはプールの楽しみ方が違うなぁと思った。
ウォータースライダーに連れて行った。身長120pからということで、ギリギリOKである。寝そべればスピードが出て、座ると遅くなる。なんだかんだ言ってビビリの優一は、座った状態でゆっくりと滑り降りていった。こちらはそこまで惹かれなかったらしく、一度滑ったきり、その後もずっと流れるプールを楽しんだ。
サチコと合流することになっていたので、2時間くらい遊んで、プールを出た。2時間でも、結構日焼けをして、背中がヒリヒリする。この感覚も久しぶりである。周りを見れば、プールにいるお父さんたちの殆どは、ラッシュガードを着ている。優一もラッシュガードを着ており、上半身裸の男性は私を含めて数えるほどしかいなかった。時代は変わったものである。なんだか、自分が時代遅れの蛮族になった気分で、少し恥ずかしくなった。
8月19日 サイクルトレインの旅
今日は、子供たちを連れて、大牟田市動物園に行った。今回初めて、西鉄電車のサイクルトレインを利用してみた。乗車券+300円で、自転車ごと電車に持ち込むことができる。予約はLINEからのみで、LINEの画面を駅員に提示し、QRコードを読み取ると自転車固定用のベルトが渡される。エレベーターに自転車を乗せるのに多少手間取ったものの、スムーズに乗車できた。

駅のホームにて。ちょっと悪いことをしている感じが良い。

列車内。よく使う路線だが、自転車があると景色が違って見える
大牟田に着いたら、まずは名物イカノリ弁当を買いに行った。職場の人に教えてもらったのだが、かつて大牟田にはノリ弁当の有名店があり、ここのノリ弁当が有名であったという。ゲソの唐揚げと、タルタルソースがおいしいらしい。そこで教わった人たちの店が、現在市内に3店舗あり、そのうちのひとつに行った。

飾らない店名と店構えなのに有名店というところがそそる
弁当を買った後、動物園に向かっていると、大型ショッピングモールがあり、サチコが本屋とダイソーに行きたいということで、寄った。本屋にはサチコが探している本はなかったが、ダイソーではサチコが探していた小物と、おやつを買った。自転車だと、このように思い付きで行きたいところに寄れるのも良いと思った。
動物園に着いたら、快晴になってしまった。ちょうど曇り空くらいかと思っていたが、予報が外れ、かなり暑い。動物たちもダレていて、出てこないものも多かった。そんな中で、間近でクジャクを見られたのは良かった。

目の前にいるクジャク。羽を広げてはくれなかった。

優一が大好きなうさちゃん。

サチコと私が好きなインコ。
暑いので、頻繁に休憩しながら動物園をまわった。そんななか、園内にともだちや絵本美術館があったので入ってみた。入場無料である。我が家にもある「おれたち、ともだち!」シリーズの著者である内田麟太郎氏が大牟田の出身らしく、それらも含めた多くの絵本が快適な室内で読み放題であった。サチコが「めっきらもっきらどおんどおん」が面白いと教えてくれ、一緒に読んで、ソファでだらだらと過ごした。
現在開催中の企画展「おもしろいきものもり」のインパクトが強かった。いらなくなったおもちゃを組み合わせて巨大なオブジェを作っているのだが、結構不気味である。直接触れたり、ものによっては乗ったりできるものもあり、大人、子供ともに楽しめた。

巨大な恐竜。原材料は主にドラえもん。

プーさんにまとわりつかれるプーさん。

主にパンダでできたパンダに乗る優一。

極上のリラックススペースでだらだらする人たち。
帰りに、イオンでアイスを食べて帰ろうということになり、イオンに向かった。ここでも、サチコが本屋を見たいということで、本屋に寄り、帰りの時間も迫ってきていたので、飲み物だけ飲んで帰路についた。
初めてのサイクルトレインの旅は、楽しかった。旅先で自分の自転車で移動していると、まるで近所をまわっているような手軽さがあり、機動力が上がる。何より、久しぶりに子供たちと一日過ごすことができて、最高のひとときであった。
8月15日 母・妹に会いに
今年の夏休みの最も大きなイベントが、母・妹宅への訪問であった。台風が近づく中、ぎりぎりのタイミングであったが、無事帰ってくることができた。台風のため、予定していたキャンプをキャンセルしたので、母・妹宅に2泊させてもらった。お世話になりっぱなしの二日間あった。
東京スカイツリー(8/12)
東京に着いてすぐ、スカイツリーに向かった。優一が一時期ハマっていたゲーム「桃太郎電鉄」で、「東京セカイツリー」として登場していたらしく、一度行ってみたいと言っていたようだ。妻が事前予約をしてくれたが、高さ350mにある天望デッキと、そこから更に上がり450mの天望回廊まで行くコースがあるらしく、一生に一度行くくらいだろうと思い、天望回廊まで行くことにした。
時期が時期だけに、凄い人であった。天望デッキに行くためのエレベーターだけで、30分くらい並び、更にそこから天望回廊に行くためにも、30分くらい並んだ。天望回廊に着くころには、子供たちは疲れ果てていた。
上から見る光景に、驚いた。人類はなんということをしているのだと思った。陸地を見渡す限り、幾何学的な都市の風景が続いている。子供たちがよく遊んでいる「マインクラフト」の世界のように、あらゆるものが直角である。ここから見られる風景は、日本の中でも特に都市化が進んだごく一部の範囲であり、地平線の向こうには山や川などの自然が広がっているはずである。そのように頭では分かっていても、目に見える範囲がこのようであれば、地球上全てがこのようになっているような錯覚に陥る。東京スカイツリーからの風景を見て、現代の地質年代を、人類の活動の影響を大きく受けているとして、「人新世」と書き換えるべきか、議論が起こっていることを思い出した。

このあたりでは屋上に広告を出すという独特の文化があるらしい

サチコが見つけたスカイツリーの影。下に住む人にとっては日時計になりそうだ
母・妹に会いに
東京スカイツリーを下りたころには、すっかり予定をオーバーしてしまったので、新幹線で小田原に向かった。小田原でレンタカーを借り、私の母と妹家族が暮らす家に着いた頃には、9時ごろになってしまった。それでも、子供たちのためにプレゼント探しゲームをしてくれた。サチコには、おしゃれなショルダーバッグ、優一は、
箱入り娘というパズルゲームをもらった。
「箱入り娘」は、「娘」と書かれた正方形の板を、スライドさせて下部の隙間から取り出すゲームだが、そのために「父親」「母親」「番頭」「小僧」などをずらしていく。優一がもらったものは、「娘」が「幸」に置き換わった特注品である。優一は、部屋に引きこもっているサチコ(幸)を優一(小僧)がダイソーに連れていくという設定で遊んでいる。
これが実に難しく、一度できたからと言って、もう一度やろうとするとできない。漢字の書かれた札でありながら、外に出ようとする「娘」に対し、「父親」や「母親」が邪魔で進めなくなるような場面が多く、そういったストーリー性も楽しめて、家族で楽しめる良いパズルをプレゼントしてもらったと思った。
バーベキュー(8/13)
二日目は午前中は雨が降らなさそうだったので、近くの川原にバーベキューをしにいった。ここでは滝行イベントもあるらしく、ずぶ濡れの集団とすれ違った。川遊びをして、食事をした後、滝を見にいった。雨が降りそうであったが、ここでもギリギリ雨に降られずに済んだ。帰り道、茶屋に寄る頃に雨が降り始め、タイミングが良いと思った。

荷物を引っ張る姪のサクミ

スイカを割る優一

河原にて
帰宅(8/14)
母・妹宅での最終日は、家でボードゲームなどをしてのんびり過ごさせてもらった。姪のユウリ・サクミと五目並べをしたところ、これが楽しかったらしく、これまでどこかよそよそしかったふたりが、「おっちゃん」と呼んでくれてようやく仲良くなれた。
妹は、相変わらずのバイタリティであった。話を聞いていても、自分で未来を切り開くという心意気がある。そうした考えを、行動に移し、子育てをしながら忙しさも楽しむような生き方がすごいと思った。今回の旅のためのアレンジをいろいろしてくれ、楽しく過ごすことができた。
母は、元気そうでよかった。私と優一が母のアパートで寝泊まりしたのだが、優一を可愛がり、歯磨きの仕上げ磨きをしてくれた。夜中、優一が母にぴったりくっついて寝ていたらしく、喜んでいた。私たちのために、事前に布団のレンタルや、レンタカー用の駐車場の手配をしてくれた。
家に着けば、夜の9時を過ぎていた。台風の影響で飛行機は多少揺れたものの、日程の変更はせずに済んだ。ぐったり疲れたが、良い思い出ばかりができた。良い旅とはそういうものであろう。母と妹に感謝!である。
余談・未来世界
久しぶりに東京方面へ旅行して、私たちは未来世界に迷い込んだのではないかと、錯覚する瞬間が何度もあった。東京スカイツリーでは、VRゴーグルをかけた人たちがテニスコートのようなところで対戦をしている。モニターを見れば、彼らが波動拳のようなものを出して相手を攻撃したり、バリアを張ってそれを防いだりするようなゲームのようだ。
レンタカーを借りて運転すれば、信号待ちで自動的にアイドリングストップしてくれる。そして、信号がもうする青になるというタイミングで、自動的にエンジンが始動した。なぜもうすぐ信号が青になることが分かるのか、不思議でならない。
出発する前、母、妹家族とガストで食事をしたら、なんと猫型ロボットが配膳してくれた。私たちは驚いたが、周囲の人たちは何も珍しがることなく、普通に食事をしている。やはりここは未来世界ではないか。変化に驚いた。
8月11日 本
読む本がなくなったので、図書館で「量子テレポーテーションの世界」(船瀬俊介、飛沢誠一著)を予約して借りた。確か、新聞か何かで題名を見たのだと思う。最新の量子力学の動向を、分かりやすく解説した一般書が読みたいと思って借りたのだが、これがまったくの的外れであった。
詳細は省くが、胡散臭いことが根拠も示さずに次々と示される。量子力学の一般書だと思って読み始めただけに、がっかりした。その中で「教科書に書いてあることを信じるやつはバカだ」みたいなことが書かれていて、ついに読むのをやめた。
現在信じられている科学が、正しいかどうかは分からない。否、「正しいかどうか分からない」と問い続けるところに、科学の本質がある。新しい学説が発表されるたび、多くの科学者が疑いの目をもって吟味し、生き残ったものだけが教科書に記される。その点で、どこかのだれかが思い付きで発言した説と比較して、教科書に載っていることの方が、はるかに精度が高いと、私は思っている。私は、借りてみて失敗だった本でも、根気強く読むほうだと思っているが、この本は、さすがに時間の無駄遣いだと思いすぐに返した。
この本を借りるついでに、3冊他の本を借りておいてよかった。
『風立ちぬ』を語る(岡田 斗司夫著)
ジブリアニメの「風立ちぬ」の解説から、宮崎駿という人の本質に切り込んでいく内容が面白かった。著者の主観によるところもありながら、アニメーションのみどころを分かりやすく解説しており、新たな目でもう一度「風立ちぬ」を観たいと思った。「借りぐらしのアリエッティ」に出てくる意地悪な家政婦、ハルさんは宮崎駿のメタファーで、ジブリスタッフの反逆だみたいなことが書かれていて面白かった。言われてみれば、顔が似ていなくもない。
ふちなしのかがみ(辻村深月著)
「怖い話」の短編集だった。学校の七不思議をテーマにした「踊り場の花子さん」はなかなか怖くて面白かった。
凍りのくじら(辻村深月著)
こちらも辻村深月の本。「かがみの孤城」が面白かったので、目に留まったのを借りて読んでいる。こちらはまだ読んでいる最中だが、引き込まれて読んでいる。主人公の理帆子は、著者自身の昔の姿ではないかと思うくらい、心理描写が秀逸である。頭が良く、本が大好きな高校生である主人公は、刹那的な喜びを得るのに必死な周囲の友人を心の中で見下しながらも、表面上はうまく振る舞える、冷めた性格をしている。一方で、どうしようもない元カレとずるずると付き合い、ハマってしまう。内容は重苦しく、鬱々としていた10代を思い起こさせるが、最後どうなるのか気になり、読み進めている。
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