2024年
2月のつぶやき




2月28日 トリセツ

 黒川伊保子さんの書いた「トリセツ」シリーズが面白い。職場での会話でたまたま知ったので、とりあえず私の身の回りにいる人たちを想定して「職場のトリセツ」「妻のトリセツ」「思春期のトリセツ」を図書館で借りて、一気に読んだ。

 大学で物理学を学び、AI開発の黎明期をシステムエンジニアとして過ごした著者は、心理学とも脳科学とも異なる視点から、コミュニケーションの仕組みを研究している。AIを研究してきた彼女は、脳をひとつの電気回路装置として見立てる。そして、組織とは、そういった電気回路装置が複数存在した場合の連携作用としてとらえる。こういう視点で見た時、ミスコミュニケーションは、驚くほどシンプルな仕組みで発生し、それの解決方法も極めて具体的でシンプルである。

 「トリセツ」シリーズは、単にハウツー本としてではなく、知を授けてくれるのが良い。曰く、私たちが反映できたのは、複数の人が異なる脳の仕組みで困難に立ち向かうからだという。トラブルが発生した際、夫と妻で脳の使い方が異なる。どちらも大事で、それにより人類は生きながらえることができるのだが、不幸なことに、脳の使い方の違いにより、コミュニケーションエラーも発生する。そのことを知っているかどうかで、私たちの考え方はずいぶんと変わる。「知っている」ということ自体が強みとなる。

 そして何より、その独特の語り口が面白い。思わず笑ってしまったり、ウンウンとうなずいたりすることが多い。以下は、「思春期のトリセツ」より引用。性的マイノリティを1ミリとて否定せず、子供を生まない選択をした人たちでも、尊重されるべきだという考えを述べた後に続く言葉が、印象的であった。

 人生は、子を持たなかったとて、なんら、無意味にはならない。
「そうそう、社会に貢献してくれればいいよね」ですって?いや、それすら要らない。
 愛しいわが子の魂が、この星で遊ぶ100年を手に入れた、と思ってみればいい。私は、息子にも、およめちゃんにも、孫にも、そう思っている。2歳の息子が、ミルクのコップを倒して嬉しそうにしたとき、私は思わず、「ようこそ、地球へ」と声をかけた。そうそう、地球はそういう星。こぼしたミルクが美しい曲線を描いて広がる星。飲んだほうが100倍楽しいけどね、と。



2月24日 歩く

 縄文杉まで行って帰って来るには、20q程度の山道を一日かけて歩くことになる。これほどの距離を一気に歩いたことのない妻は、同じ距離を実際に歩いて体感しておきたい、と言う。調べたところ、2つとなりの市のショッピングモールがちょうど10q程度の距離にあるらしく、サチコとともに出かけていった。

 私もちょうどワークマンのオンラインストアで注文しておいた登山用のウェアが、店舗に届いたというメールが来たので、優一と歩いてワークマンに行き、帰りには図書館で予約していた本を受け取って帰ることにした。距離にして10km弱。

 優一とおしゃべりをしながら歩いた。話題は専ら、優一が最近ハマっているマインクラフトで、「作業厨」※1とか、「回路勢」※2と呼ばれる人たちが作った動画の話である。作業厨達が最大マップを何週間かけて整地したとか、ニワトリの卵を投げまくったらニワトリだらけになったとかいう話を延々と聞きながら、国道沿いを歩いた。

※1 常人では理解できない膨大な時間をかけて、レベル上げや、装備の制作を行う人たちのこと
※2 マイクラの世界で、電気回路のような仕組みを使って自動装置を作る人たちのこと


 生き生きと話す優一に耳を傾けながら、私は嬉しくなった。延々と歩くことに飽きることもなく、自分の好きな世界の話をしている。私が面白がって聴いてあげると、どんどん話してくれる。優一が、マイクラ動画の話をしながら屋久島の大自然を歩くことになると思うと、楽しみになった。でも将来作業厨にはならないでね、と言っておいた。

 結局、優一は特に疲れたともつまらないとも言わず、ゴキゲンで歩いた。妻とサチコも20qを歩き、夕方ごろ帰ってきて平気そうにしている。思ったより体力のある我が家である。


2月22日 縄文杉に向けて

 ここのところ、サチコが毎日のように「屋久島に行って縄文杉に会いたい」と言っている。屋久島へは、2018年8月に行ったのだが、その時に屋久島が好きになったらしい。しかし、ちょうど車酔いが始まったタイミングで、体調が整わず、十分に堪能できなかったという。

 縄文杉への道のりは、ハードである。約10qの山道を往復10時間くらいかけて歩くことになり、前回は選択肢にすら入れていなかった。今では、子供たちも成長し、昨年11月の背振登山でも計12qの道のりを平気でついてきたことを考えれば、縄文杉までたどり着くことができそうである。

 GWに行くことに計画し、手配を始めたが、すでに航空機やツアーガイドの予約は埋まってきている。特にガイドは、10歳以上を対象としているところが多く(優一はGW時点で9歳)、年齢制限の無いガイドを5件当たって、空いていたのは1件だけであった。よって、以下のようなざっくりした計画ができた。

5月4日 16時 屋久島着
5月5日 早朝より縄文杉ツアー
5月6日 未定 夕方の飛行機で帰宅

 縄文杉登山にあたり、登山用のレインウェアやトレッキングシューズ等の調査を始めた。現地でのレンタルも活用しつつ、履きなれていたほうが良いシューズは購入しようかとも考えている。そして、何よりも体力をつけておかなければならない。週末には近場の山を登りに行き、歩きなれておこうということになった。言い出しっぺのサチコは、がぜんやる気になり、たくさん歩いて体力をつけたい、という。何事も不安が先立つ妻は、お陰で装備品などを色々調べてくれている。優一は、飄々としている。

 インドア派かアウトドア派か分からない我が家の、挑戦が始まった。


2月14日 タコ焼き

 今日、仕事を終えて家に帰ると、机の上にタコ焼きが置いてあった。昼間、子供たちが食べた残りのようであった。これは晩酌のお供になりそうだと思っていると、風呂から上がってきた優一が、「お父さん、タコ焼き食べていいよ」という。このタコ焼きどうしたの、と訊いても、「むふふ〜」と笑うのみである。

 ひとつ食べて驚いた。これは、タコ焼きではなく、タコ焼きの形をしたスイーツであった。粉はホットケーキミックス、ソースはチョコソース、マヨネーズは練乳、青のりは抹茶パウダーであろうか。非常によくできており、タコ焼きだと思って食べただけに、その味のギャップに衝撃を受けた。

 聞けば、優一のガールフレンドのミハルちゃんが、バレンタインデーのプレゼントにと、お母さんと一緒に作って持ってきてくれたという。相変わらずのモテ男である。以前、我が家でタコ焼きパーティーをしたことがあり、そこからインスピレーションを得て、工夫してタコ焼きの形をしたスイーツを作ってくれたらしい。凄い再現度で、口にするまでタコ焼きだと思って疑わなかった。

 すっかり騙されたが、貴重な体験であった。


2月11日 ビッグブリッヂの死闘

 任天堂SWITCHで、「ファイナルファンタジーX」のピクセルリマスター版をプレイしている。「ファイナルファンタジーX」は、1992年にスーパーファミコンで発売されたRPGで、妻も私も夢中でプレイしたことから、懐かしく遊んでいる。レトロゲームが好きなサチコも、一緒に楽しみながら観ている。

 昨日、異世界に向けて旅立った主人公たちが、悪の化身、エクスデスの城に囚われてしまったところからプレイし始めた。異世界の王、ガラフに助けられて城から脱出し、ビッグブリッジに到達すると、あの音楽が流れ、私たちのテンションは爆上がりした。

 「ビッグブリッヂの死闘」は、そのカッコよさと難易度の高さから、あらゆる楽器奏者のあこがれの曲として演奏され、Youtube等で聴くことができる。少し探せば、ピアノ、バイオリン、フルート、リコーダーのほか、オーケストラ編成、はては琴や三味線などの和楽器の演奏まである。小学校低学年の女の子が、エレクトーンの発表会でドレス姿で演奏している動画には、さすがに驚いた。

 特に難しいのが前奏部分で、Csus4(ドファラの和音)を高速で上がり下がりする。フルートで少し練習してみたが、出来る気がしない。おそらく、人間が演奏する前提では作られていないのではないか。それでも、世代を超えて色々な人がこの曲を愛し、ひとつの目標にしているのは面白い。


2月11日 インドカレー

 昨日の「チコちゃんに叱られる」は、衝撃的であった。「なんで日本のインドカレーにはナンがついてるの?」の答えは、石材店の社長、高橋重雄氏が早とちりしたかららしい。

 ナンを焼くための窯、タンドールは、インド北部の高級店にしかなく、ナンはインドでは一般的でないという。町でインド人に質問しても「日本に来て初めてナンを食べました」と言っている。しかし、たまたま雑誌でタンドールを見た社長は、インド料理にはタンドールは不可欠と思い込み、それを製造、インド大使館御用達のインド料理店に売り込みをかける。

 そこから独立して店を開いたインド料理店でも、かの日本製タンドールが使われるようになったということらしい。

 日本のカレーが、日本で独自に進化し、もやは日本料理のひとつと言っても過言ではないと思っていた。しかし、まさかインドカレーまでもが日本で独自に進化していたというのは衝撃であった。

 インパクトがあったので、影響を受けてしまい、この日の夜はナンとキーマカレーを作り、家族で食べた。


2月10日 確率と巨大数と優一

 優一は、世の中の小学生男子がそうであるように、大きな数や、小さな数が好きである。Youtubeのマインクラフトでレアな事象が起こる確率を解説した動画を観ては、その確率を暗記するという、一見何の役にも立たないことをして日々を過ごしている。親には、「ピンクの羊が生まれる確率は?」(0.16%)「パーフェクトチキンジョッキーが生まれる確率は?」(0.0000・・・00075%)みたいなクイズを出してくるが、質問の意味すら分からない。

 あるとき、優一に「サイコロを1回振って、3が出る確率は?」と訊いたら、すぐに「1/6」と返ってきた。「サイコロを2回振って、2回とも3が出る確率は?」と訊いたら、少し考えて「1/36かなぁ」という。小学2年生にして、確率の考え方を理解していることに驚いた。

 「世の中に確率が0%のことってあるの?」と訊かれたので、「サイコロを1回振って、7が出る確率は0%だ」と教えたら、納得していた。

 マイクラの動画も無駄ではないらしい。


 大きな数が好きな優一に影響を受けた妻が「グラハム数」のことを調べている。数学の証明で使われたことのある最大の数として、1980年にギネスブックに載ったらしい。グラハム数を知るには、巨大数の表記方法を知らなければならないという。

 「1」の後ろに「0」を頑張ってたくさん書けば、いくらでも大きな数は表せるじゃないかと言ったが、そのような次元ではないらしい。その表記方法自体に、頭が追い付いていかないと、妻は言う。家族で、食事をしながら、テレビでYoutubeの「ゆっくり解説」を観てみた。

 10進法(普通の数字の書き方)から、指数表記「1010(=10^10)」、そして、指数タワー(ペトレーション)「10^10^10」あたりまでは理解できる。そこから更にペンテレーション、ヘキセーションとかなってくると、もう頭が追い付かない。

 小学生の好きな無量大数でさえ、「1068」とシンプルに書ける。宇宙に存在する原子の数は約1080個らしい。このように書くことすらできない巨大な数に、何らかの意味があるというのは、理解はできないが面白いと思う。

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