銚子みなと祭(千葉)



 銚子みなと祭りは、八月の上旬に千葉県の銚子市で大漁を祝って行われる祭で、勇壮な祭囃子に乗ってたくさんの神輿が練り歩く、活気あふれる祭である。

 私がこの祭に行ったのは大学の一年と四年のときであるが、銚子に行ってまず驚いたのは、交通ルールの守らなさである。車が普通に歩道を走っていたり、混んでる道路で原付が反対車線を逆走して信号無視するのも見た。路駐も異常に多かった。聞いた話によると、プロレスが来たときに日本一沸くのは銚子らしい。場外乱闘などやろうものなら大変なことになるという。やはり270度太平洋の荒波に囲まれた地域特性がこういった荒々しい気質を生んだのであろうか、祭も漁師町らしい迫力のあるものだった。

 いくつもの連がそれぞれ自分の神輿を持っており、それをかついでそれぞれの笛と太鼓のリズムに合わせて練り歩く。笛のメロディーはアップテンポで直線的であり、いかにもそこに生きる人たちの気質を表しているようである。大太鼓には木の棒が取り付けられており、それを二人向かい合わせになってかつぎながら叩く。ときどき太鼓をかついだままぐるぐる回ったり、反ったり、倒れてごろごろ転がったりする。軽い桶胴太鼓をかつぐ芸能はあるが、このように重たい宮太鼓をかついで跳ね回る芸能は、全国的にもかなり珍しいのではないだろうか。

 神輿も、かなり大きいのに揉むときは激しく揉む。いかにも「祭のために生きてます」と言わんばかりのおっちゃんたちが、すごい勢いでかつぎ、観客のほうに突っ込んでくるときもあった。神輿こぶが常識では考えられないくらいに盛りあがっている人もおり、びっくりした。女性のかつぎ手も負けていない。普段はヤンキーやってますといった感じのネエチャンたちが「オーラーどしたい!」などの掛け声をかけつつかついでいた。

 神輿が休んでいる間は大太鼓が地面に斜めに置かれ、さまざまなお囃子が演奏される。特に頻繁に演奏されるのが「銚子大漁囃子早打ち」で、すごいテンポの下打ちに合わせて、華麗かつ力強いバチさばきで太鼓を打つ。立ち膝の姿勢で叩くのだが、バチがいろんなところでぐるぐる回っており、見るものを惹きつける演奏であった。お囃子は普通、言わば祭のBGMのような役割であり、人に視覚的に見せるためのものではない。しかし、銚子大漁囃子に関してはまさに人に見せるためのお囃子であり、見ていて非常に楽しい。

 銚子の祭は、言葉で言ってしまえば神輿をかついでお囃子とともに練り歩く、というものでごくごく一般的な祭と大差ない。しかし、実際に行ってみると町の雰囲気や人々の気質がいかにも漁師町で、その祭も荒々しく、勇壮である。漁師町を知らないほとんどの人にとっては新鮮で、興奮する祭だと思う。

 あまり関係ないが、最後に是非とも書いておきたいことがある。銚子に行ったときに、評判の回転すし屋に行った。何が評判かというと、ネタの大きさである。以前に行った人がとにかく凄いと言うので、どんなものかと行ってみたが、そのすしは常識をはるかに逸脱していた。マグロやシャケなどは、大げさでなくシャリが見えなかった。ネタでシャリが完全に覆い隠されているのである。タコは足が丸々一本、シャリを押し潰すように「ど〜ん」と乗っかっており、皿からはみ出していた。当然シャリとネタを同時に食べることなんか出来ない。一皿食べるのに20分くらいかかった。


左:跳ね太鼓の様子             中:祭りの様子            右:ありえない寿司

 

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